日経産業新聞(SmartTimes)にパートナー・村松の寄稿記事「正解にするんだ」が掲載されました

2024年3月6日の日経産業新聞 Smart Timesに、当社パートナー・村松竜の寄稿記事が掲載されました。

記事タイトル『正解にするんだ』

本記事の転載
出典:日経産業新聞 SmartTimes 2024年3月4日付記事
記事URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC197K80Z10C24A2000000/

以下、記事本文


正解にするんだ

SmartTimes GMOペイメントゲートウェイ副社長兼GMOベンチャーパートナーズファウンディングパートナー村松竜氏

起業家がどうやって事業を大きくするか、その正解を学びたくて新卒でベンチャーキャピタル(VC)に就職した。29才で自分も投資される側になる決意をし、今の会社の前身の一部になる決済スタートアップを起業した。

やってみると、VC側から見ていた景色とは全く違った。「日本の決済を変える」と前途洋々な夢を語っていたが、なかなか伸びない売り上げと増えていく社員を見ながら、金策に走り回る日々だった。夜中にうなされ自分の声で目が覚めることもあった。成功すれば華やかに見えても、スタートアップは孤独で正解の見えない、不安な決断の日々だ。

私たちVCは投資の際にはその分野の成長性、潜在的市場規模(TAM)の大きさ、その会社自身の成長の蓋然性やビジネスモデルを判断する。だが一度選び取った後は「経営陣の力量」を応援するのみだ。それはプライベートエクイティ(PE=未公開株)ファンドとは異なり、直接関与ではなく、間接的な応援になる。

スタートアップが死ぬのは、現金が尽きたときだという。しかし私はそれ以上に、起業家の士気や闘志が尽きたときの方が重要だと思っている。彼らの最後にして最大の経営資源は、経営陣の士気や闘志なのだ。それさえあれば、いくらでも応援の方法は考えられる。あきらめずに粘る経営陣を見るから、集まってきた社員も彼らを支えようと思える。

200社を超えるスタートアップに投資し応援してきたが、最初から順調だった会社は1社もない。とくに起業時のもくろみはほとんど外れる。苦境に立ったところから何をするかで決まる。

今では投資家から300億円近い資金を集め、社員も世界で9000人になっている五常・アンド・カンパニーという会社がある。同社は金融事業を行っており、事業成長のため増資が必須だった。創業者の慎泰俊さんは法人投資家をたくさん回ったが、設立して間もない2015年はまったく資金を調達できず、やむなく方針を変え全国の個人投資家を訪ねたと言う。

1万社以上が利用する、経費精算のデジタル化サービスのバクラクで急成長しているLayerXでも、創業者の福島良典さんは最初の事業を社員30人の時期に根本的に転換したそうだ。ゼロから全員で営業して今の成長軌道に乗ったと振り返る。

経営と投資と両方を20年続けてきて思うことは、最初から正解はないということだ。もがき、不安な決断をくり返したその先に、ある時、奇跡のような成長が生まれる。あの決断が正解だったんだと思える日が来る。

暗闇を模索しそれでも進もうとする起業家の心の灯を、私たちは強く、永く支えたいと思っています。


JAFCOに入社。担当先GMOインターネットの上場後に決済スタートアップを起業。2005年にGMOベンチャーパートナーズを設立。12年よりシンガポールを拠点に活動。早大政経卒。

[日経産業新聞2024年3月4日付]


なお、本寄稿は2017年より連載されており、これまで35本の記事が掲載されております。全記事の一覧は下記のリンクからご覧いただけます。

(村松寄稿記事一覧へのリンク:https://www.nikkei.com/topics/22A06129)