シリアルアントレプレナー本田氏の率いる、フリークアウト上場前日秘話
テクノロジーによりマーケッターを賢くし、リアルタイムで入札を自動化する運用型広告形態のDSP。
広告業界にその最先端のテクノロジーで革新をもたらし、設立から3年数か月という凄まじいスピードでマザーズ上場を果たしたフリークアウトであるが、GMO VenturePartnersは、2012年2月時点に同社に対してステルスでの投資を行っていた。
2014年6月23日、フリークアウト上場前日、我々は同社の本田社長とCFO横山氏にインタビューを行い、「まさにスパークする直前」の起業家のリアルを捉えることに成功した。本記事ではその一部を抜粋してお伝えする。
村松:早速一つ目の質問はですね、もう2年前になると思うんですけれども、最初の大型ファイナンス=シリーズA的なファイナンスをした時の様子というのを振り返って頂いて、創業者とCFOから見てどんな心象風景だったかという部分を、ちょっとお話いただけますかね。
本田:そうですね、あれが2年くらい前かなとも思うんですれども、おそらく当時のファイナンスの数字感でいうとまあ、かなり大きいことをやったという印象がありまして。なんていうか初めての大型ファイナンスだったんで色々心配はあったんですけれども、それなりに。村松さんには個人的にフリークアウト以前から、仲良くさせて頂いていて、そこにおける安心感と言うのは非常にあったのかなと思ってはいたので、入られることによる不安感というのは全くありませんでしたし、参加されたいと言っていただけたときに前向きな気持ちしかなかったのはあります。結果として見ても、村松さんに上場までの流れというのを色々アドバイス頂けたのはありがたかったです。
村松:ありがとうございます。本田さんは前の会社であるブレイナー社を起業されていた時にはそれほどVCファイナンスをしていなかったのですよね、色々なVCと話して、ファイナンスを組み立てるというのはそのときが初めてだったんですかね?
本田:はい、規模感から行ってもあの位のことは初めてだったので、事業としても早いタイミングで黒字化できていたものの、海外に乗り込んでやっていきたいというか、急ペースで伸びてゆく中で一気にアクセル踏みたいというか、そんなニーズが有る中での調達だったのですが。
そのとき市場に関しては、「間違いなく伸びる」という安心感がありました。そこに関してあまり不安はなく、その上で市場の伸びに自分たちの売上はちゃんとついてくるな、という自信もありました。ただ、自分たちの描けている絵をちゃんと理解しているファイナンス面でのパートナーという面においては、やはり私達の身をおいているマーケットの可能性というものをご理解いただいているというのがもう大前提かなと思ってまして。
そういう面ではGMO-VPの皆さんは安心感があったというか、RTBの反対側のKauliとかもやっているってことも含めて、このマーケットに関する理解は問題ないなという風に。
村松:ありがとうございます。今うちを選んだ理由について教えていただきましたけれども、そのとき期待値の部分で、こういうことやってくれるだろうな、だとか、こういうことやってくれたらいいな、というようなご期待はどのくらいあられたのでしょうか。
本田:そうですね。事業に対する部分は自分たちでもある程度サポートなくともやっていけるのかなとは思っていて。もちろんこう、ちょっとした案件ベースでのご紹介を頂けるというのはあればうれしいなあとは思っていたんですけれども。そもそも何かひとつ事業の面でものすごい不安があって、例えば「開発力はあるけど営業力は無いのでまるごとお願いします」といった会社ではなかったので。
さっきもお話しましたけど、ファイナンス面でのこのマーケットの可能性のご理解と、それに対してちゃんとベットしてくれること、みたいなことが期待値でした。今もそうですね、同じRTB・DSP の世界で、アメリカのプレイヤーがかなりのバリュエーションで評価されていて。我々も決して日本だけで戦っているわけではないので。そういう意味でこの事業の可能性みたいなところはやっぱりわかって頂く必要があります。そこですね、常に。
村松:まあ、逆に言えば、私も本田さんにさんざん5年前くらいから教えていただいたところがありますからね。予習はバッチリ、みたいな、そういうところはあったと思いますけど、
横山:当時のVCさんはそれほど、アドテクをちゃんとご理解されているところって実際少なかったと思うんですけれども、そういう意味で知識と言うか、業界の理解度と言った部分では、他VCさんと比べると違うかなというところがありましたね。
村松:ブログにもこの間書いたんですけど、本田さんが最初にホワイトボードに「まだまだチャンスは有るでしょう」という説明を、セルリアンの勉強会に来て頂いて。あの「百式勉強会」のときなんですけれども、そこから始まったと言うのはすごくありましたけれどもね。
そもそもシリアルな方が起業するというのが、その当時そんなにまだなかったですよね。というか最初なんじゃないんですか?本田さんが。本格的なシリアルアントレプレナーというのは。
そういう意味で、シリアルアントレプレナーが起業して、それなりにファイナンスの原資というかご自身の資本を持っているのに、それでももう一度VCから資金調達、という流れを本田さんが日本で始められて、その後流れが続いている感はありますよね。
本田:山田さんとか、木村さんとか。
村松:みんなそうですね。赤松さんもそんな感じがしますし。それって、最初どう思われたんですか?つまり手金でもできるわけじゃないですか。まあ現に、最初は手金でやって、最初3億5千万円の調達ですけど、別にその、出せなくは無いわけですよね?そこでこう、逆にどうして外部から入れるというご決断に至ったんですかね?
本田:まあ、それはなんかこう、自分はけつを叩かれてるほうがやるんですよね(笑)
横山:適度な緊張感大事ですしね(笑)
本田:ある意味、前回以上の成功をちゃんとするということに意味があると思っていて。シリアルというと同じくらいの難易度をやっていてもさして興味はないかなと。M&Aなども全く最初から考えていなかったですし、特に前回も日本で最大のインターネットカンパニーにM&Aの機会を頂いたので、やっぱり次って考えるとそうですね、普通に考えたらやはり上場を目指すべきかなというのも早い段階から意識はありました。
村松:なるほど、それは面白い話ですね。
本田:と思った場合、それはつまり、逆にいざというときに自分の手金では足りないという事態も当然起こるだろうと考えているべきでしょうし。
村松:もう創業メンバーも最初っから、本田さん佐藤さん横山さんと揃っていて、なおかつアドバイザリーの方が海老根さんとか、結構重鎮が揃っていて。そこもやはりそうですかね、大きく勝負していこうというのがあってそういう布陣にしていたんですかね。
本田:そうですね、やはりあと自分も学びたい、伸びたいという気持ちはありました。ですので、まあ一つ前の会社が、まあ小さくまとまったテクノロジーカンパニーで、やはり今回目指すべきはそうですね。
村松:より大きく?
本田:より、経営者としても少し上のレベルを目指したりですとか。そのためにそういった、経営のご経験をお持ちの方と一緒にやるという中で、テクノロジーの面では元ヤフー明石氏に来てもらいましたが、自分の上司だった明石氏がうちにきて、エンジニアをまるごと見てもらうみたいなそのレベルのものをやっていたいという思いですね。
村松:それもすごい話ですよね。その、実際2年3ヶ月くらい経ちましたけど、期待通りの行動は出来てますか?と言ったら変なんですけど、この2年数ヶ月はどうだったでしょうか?
本田:あ、でも半分YES半分NO位じゃないですか?
村松:NOのところも教えてもらいますか?ちょっと怖いですけれども(笑)
本田:そうですね、わかりやすく拾って言うと、例えばモバイルなんかはまだ課題があると思っていて。ただ確実に、技術的に最も高い位置にいるプレーヤーが勝っていくような土壌にはなりつつありますが、まだ市場というか土壌が完成するまでにちょっとかかる部分もあるかなとは思っていて。そのペースの読みに関してはそうですね、もう少し早くても良かったのかなあというのはあるので、我々が引き続き頑張って行きたいなあと思っているところですね。
村松:なるほど、なるほど。
本田:あとはそうですね、海外についてもまだまだ勉強中というか、色々各国の違うマーケット見ながら、一つのコアテクノロジーをもっている会社が、各国に対して何を投下してゆくべきかという点については、まだまだ未開発なので。
村松:あの当時は私もシンガポールに住むなんて思っていませんでしたが結果的にそうなって。今のシンガポール政府も、ビッグデータ、データサイエンスを国の大きな産業政策の一つに位置づけてますので、そういうところに、もうちょっとグイッと入り込めるといいなあと思ったりはしますね。
最後にすいません、今、資金調達中の起業家の方々に、アドバイスを頂けませんか。今って結構投資家が来ると思うんですよね、いい案件だと。そこでどうやって投資家を選ぼうかな、というのは皆さん結構悩みがちというか、こうやって選ぶんだみたいなブログも出てたりしますけど。横山さんは、CFOとしてのアドバイスみたいなものは、どうでしょうかね?
横山:VCさんにとっては本音と建前ってあるかなと思う中で、特に今回、マザーズ上場というところに対して、本当に親身にご相談に乗って頂けたのはGMO-VPさんかな、と、僕の立場としては非常に思うんですね。まあそれが例えばValuationの話であるとか、上場のタイミングであるとか、色々あるとは思うんですけれども、その節目節目のところで、いつも本田との話で出てくるのがやっぱり村松さんというところではありました。VCとしてのリターンも得なければならない一方で、きちんといわゆる発行体、会社の方の立場と同じような視線にたってアドバイスいただけたというのは非常に我々にとって、ありがたかったな、と。まさにVCさんに入って頂いてよかったかなと思える側面の一つではありますね。
村松:有難うございます。本田さんからも、若手にズバッとアドバイスを。
本田:そうですね、あの起業家として確固たるものを持っていれば、まあ僕らはポジティブな話しか聞きたくないんですよ(笑) その点ではそうですね、応援していただけるところがいいなとは思ってまして。やはりそのまあアドバイスの中でもそうですね、日本の事業の先駆けでもない限りは基本的にはピックアップしたくないんですよ。そういう意味では、ポジティブに応援していただけるところが私は好きだなと思ってます。
村松:まあ最近そうですね、VCのアドバイスはほとんど間違っているとか、色んなブログが言っていたり(笑)
横山:多分我々のやっていたころはこう赤裸々なVC分析ブログなんていうのは、今ほど多くなかったような気がします。今は情報過多な分こう、どう選んでゆくかというのが、まあ起業家ネットワークだったり色々あるとは思うんですけれども、なかなか難しくなってきているんじゃないですかね。
村松:なるほど。有難うございます。もういよいよ、明日上場ということで、未上場時のインタビューとして多分最後の・・・この後取材無いですよね(笑)
本田:はい。
村松:最後の取材ということで、明日上場で、9時になったら競りが始まるわけですけど、今日が最後じゃないですか、どんな感じですか、お心持ちというか。
本田:まあでも、やっとスタートに立てたかなというところはありますよね。単純にプライベートかパブリックかという点もそうなんですけれども、元々目指していたのがテクノロジーで広告やマーケティングの世界を推進してということであった中で、世間からの認知という点においても、ようやく最初の形が作れた地点だと思っているので、ここからどこまで行けるか、というところですね。
村松:そうですよね。横山さんも、このタイミングって意外に早かったな、とか、超長かったなとかどんな感じですか?
横山:フリークアウトはやはり早かったという印象がありますよね。
村松:上場する会社を見ていて常々思うのが、未上場時期に作ってきたこれまでの基盤というか、社員さんやノウハウという最大の経営資源が、すごい大事だと思うんですよね、上場したあとにちゃんと花開いていくかっていうところに対して。御社に関してはかなりいい感じでパワーが貯めこんでいると感じているので、すごく良いなと。この後の爆発的な拡大に、単に売上だけじゃなくて、色々なところがどんどん拡大してゆく予感がすごいするので、非常に楽しみだなと思ってます。
我々も、上場したあとも引き続きお手伝いするというのをモットーにしてますので、今後とも宜しくお願い致します。本日はありがとうございました!