100年後の経営者が求める会社の遺伝子をつくる

人とサービスを成長させる KAIZEN Platform, Inc.

 

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「我々はWebサービスに成長を提供する」というスローガンを掲げ、2013年に設立されたKAIZEN Platform, Inc. は、様々な才能を巻き込み自身も急速な成長を遂げている。

リクルート最年少執行役員という華々しい肩書を捨て起業に到った同社CEO須藤氏は、いま何を思い事業を作り続けているのか。

 

GMO VenturePartnersは2013年8月時点で同社に対しシード出資を行っている。

今回は須藤氏への取材を通じて、業界の注目を集める同社の事業理念を深堀りすることを試みた。

(インタビュー日時:2014年8月)

 


 

宮坂:じゃあまず振り返りから。すどけんさんは、リクルートにいらっしゃったわけじゃないですか。当時のリクルートって人材の輩出会社と言われてたり、今度上場もすると思うんですけど、組織としてはどんなところでしたか?

 

須藤:一個あるのは、人材がすごいいいなと思っていて、なんて言うんですかね、そもそもみんな明るいし、ノリがいいし。かと言って頭もいいし、行動力もあるし。リクルートの凄さっていうとみんな色々言うかもしれないけど、僕は「人の密度」みたいなのがすごい濃いなと思っていて。

 

宮坂:なるほど。リクルートを辞めたのは、なぜですか?

 

須藤:そうですね。なんかあの、サービスを作りたいていうのがすごいあって。で、やっぱ会議が多くてですね、会議室でなんか色々やってるんですけど、それよりも世の中の役に立つサービスを作りたいっていうのがクリティカルにありました。このまま会議してても、なんか何の役に立ってんのかなというようなフラストレーションて言うんですかね、なんかモヤモヤしたものを常々感じていて。どんなビジネスかはあんま考えてなくて、どんな人とやりたいかは、ぼんやりと考えている程度でした。どうだろう、やめる時って石橋さん(同社Co-founder)とかとやろうとかそんなことすらまだ決まっていなくて、とりあえず、「そうだ、シリコン・バレーに行こう」っていう。そうだ、京都に行こうぐらいの(笑)

あと、最悪なんとか食っていくのはどうにかなるんじゃないか、っていう魂胆みたいなものがあって、今は何でも良いからおもいっきりやってみるかというぐらいの感じですね。

 

宮坂:では、どういう視点で、今のビジネス領域やビジネスモデルを選んでいったのでしょうか。

 

須藤:あ、でも色々考えていて、結局ピボットみたいなことをやりましたよ。前のプランは、これ儲かるなとか、これいけるなとか、そういうこと考えて作ったんですけど、結局なんかワクワクしないな、と思ったんですよね。おれ、こんなつまんないことやるためにシリコン・バレーとか行っちゃってんのか、とか思って。そのときに、やらないと後悔することはなんだろなって考えてたら、僕はずっと広告の仕事で、毎回「お客さんのサイトを良くしたい」って思ってたことに気付きました。やれたらいいなと思っていた仕事を、「こうやったら色々出来るんじゃないか」って思ってできたものが、今のプランの土台です。それを、グローバルなビジネスとして立ち上げよう、という感じですね。

 

宮坂:グローバルという話だと、むこうでの採用ってかなり難しいと思うんですよね。どうやって採用して、どうやって文化みたいなものを作っているんですか?

 

須藤:意識していることがあるとすれば、「変化することに慣れる」ってことでしょうかね。なんかそれがすごい大事な気がします。

変化し続けていくっていうことをみんなにも要求しなきゃいけないし、僕自身もそうしないといけないと思っています。その結果もちろん細かいところで色々でてくるんだけど、まあみんなで世界のビジネスやろうよっていうその志を共有することなんじゃないかと思いますけどね。

 

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宮坂:採用はかなり順調にいってますよね。

 

須藤:まあ順調にいってるかっていうと皆さんが思っているほど、順調では無いんですけれども。この人と働きたいっていうのを諦めないのは確かですね。

 

それと、一人ひとりが僕の上司になるかもしれない、と思っていて、「僕がこの人の下で働けるか」って考えてますね。グローバルにビジネスをやっていく時に起こりえることって、「僕、じゃあ株主からクビになります」って、これありえることですよね。その時に、KAIZENが他の会社よりも働きたいと思える会社になってるかどうかが、まず一つ目です。二つ目に、自分の上司がいっぱいいる環境というか、僕自身がこの人の下で働いてみたいなって思える人を採用する。これが大事なんじゃないかと。

 

宮坂:投資家選びの方はどういう風に決められたんですか?

 

須藤:そうですね、最初かなりいっぱい回ったんですよ。アメリカと日本のVCを。で、回ったら段々わかってきたんですよ。これは特徴があると。質問されることが色々違うなと。

 

それでわかってきた僕の中での条件は、すごいクリアに言うと、まず事業のことをわかってない人と絶対に仕事したくない。最初のシードの時期って、すごい事業に向き合いたいんで、それをいちいち説明してたらやってられない。少なくとも事業の肌感とか温度感というのがパッと分かる人たちとやるべきだっていうのは直感的にわかってきていて。たまに質問がトンチンカンな人とかいるわけじゃないですか。ありえないな、みたいな。あと日本とアメリカで言うと、どっちにしろ日本からビジネスを立ちあげなくちゃいけなくなり、そうするとやっぱ日本の投資家とやったほうがいいかなという感じでしたね。

 

日本の事業を分かっている投資家のなかでも、GMO-VPさんとGREEベンチャーズさんとCAVさんを選ばせて頂いたんですけど、僕らってその時必要だったのは、お金以上に、コネクションだったんですね。ビジネスコネクションっていうのが本当になかった。営業もそうだし、採用っていうのもそうだし、僕らの持っていないコンタクトを持っている人たちってすごく重要だと思っていて。だから一社では無く、二社ないし三社だよねっていう風に思っていて。

 

その時に、村松さんとかとお話させていただいた時に、明確に僕と全然違うバックグラウンドで。僕、決済とかEC とか全くわかんないし。そう、結構クリアに覚えてるんですけど、これもう僕の生きてきた、「PC広告、メディア」とかの世界と全然違うから。「決済、EC」って。すごくいいなと思ったんですよ。「めっちゃいい!」と思いました。

 

で、その皆さんとお話させていただいた時にすごい思ったのは、みんなそれぞれ事業をやってるし、経験してるし、事業のことが分かるから、話してて気持ちが良かったんですね。あーそうそうこういうところ苦労するよねとか。最初は営業一緒にささっと回ってもらったりもしたんですけれども、あの時とか、本当助かりました。

 

宮坂:しましたねー。でも最近でも栄井さん(同社メンバー)からプッシュを頂いています笑 今後事業を作っていかれる上で、須藤さんがベンチマークにしている経営者とかっていらっしゃいますか?

 

須藤:あー、親しい人の中にいっぱいいるんですけど、他に参考にしているのはあれですね、渋沢栄一。日本の今を支える企業を作ってる。銀行も作ってますし、だからベンチャーキャピタリストでもありますし、起業家でもあるんですけど。

世の中の役に立つサービスを作りたい、事業を作りたいって思ってきたときに、誰を参考にしますかと言われると、僕は渋沢栄一。大好きですね。

 

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宮坂:その上で、 KAIZENはどのように変化していくのでしょうか。

 

須藤:どうなんですかね、うーん。まあずっと変わるんだとは思ってまして。僕が結構思ってるのは、なんというか継続的成長、ってのは何なんだろうとか、すごい考えてまして。例えばカイゼンが百年も千年続く会社だとしたら、今は何をすべきなんだろうとかって言うことを考えてますね。

あれこれ忙殺されていくもんなんだろうと思うんですけど、もし、百年後のKAIZENの経営者がいて、僕に「いや、それじゃなくてこういうことやっといてくれよ」って言っていると考えたら何言われるかな、っていうのはずっと考えてますね。事業っていうのはバトンを渡していって、次の経営者とか次の従業員とか未来の人たちがやっていくもんだと思うんで、今僕らが作っている最初の時の遺伝子ってすっごい大事だと思っていて。それがこう、何が残っていれば、他のものは何が変わろうが別にいいよね、みたいな部分ですね。

 

宮坂:それってやっぱリクルートもやっぱそういうとこあったんですか?

 

須藤:ありますね。事業をやる瞬間から、その次は誰にやって欲しいかとか、どうやって次の事業を磨いて、次の人にお渡しするのかとかって、事業責任者になったら多分みんなそういうこと言われていると思うんで。どう伸ばして、どういう風にして、どういう状態で、次に渡してゆくのか。

 

宮坂:会社を成長させていく中で、アメリカに本社があって、上場というプロセスについてどう考えてらっしゃいますか?

 

須藤:そうですね、上場っていうのは、多分投資家からするとEXITになるんですけれども、事業を継続してゆく側からすると通過点ですよね。事業が更に大きく飛躍していくために、やっぱり調達をして、やっぱりパブリックになって、色んな方たちの目にさらされていく。上場するときよりも上場した後の方が長いと思うんで、その責任をどう果たせるのか。その責任を果たせる状態ってなんなのか。あるいはその後にずっと継続的に成長していくってどういうことなのかっていうのが、出来ないと僕はやっぱりあんまり上場ってのはあまり急ぎたくないですね。今すごくマーケットがいいので言えますけれども、僕自身はそんなに焦っているわけでも無いですし、焦っちゃいけないとも思ってるんですよね。世界で、KAIZENどうやって広げていけるかなって言うことの手段として、じゃあそれはもうパブリックにしたほうがいいよねっていうところにぴったり合ってくれたらいいなあ、と思ってやってます。なんで、ちょっとごめんなさい、あんまり投資家の皆さんには、都合が良くないかもしれない(笑) 割と気長に、考えてます。

 

宮坂:うちは大丈夫です。ファンドの満期、まだ全然なんで(笑)

 

須藤:ファンドの満期ぐらいはもちろん、この成長スピード(直近90日で売上2倍成長)だと行かないとマズイだろみたいな感じなんですけど(笑) 

 

宮坂:なるほど、本日は有難うございました!

 

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中川(裏方):最後、番外編として僕も一個聞きたいんですけれども。すどけんさんは色んな才能を持った人を連れて巻き込んで行く部分がほんと凄いなあと思っていて見てるんですが、そういうときってどんなことを意識されてるんですか?

 

須藤:あーでもなんだろう。社会人になってからだと思うんですけど、なんか悩みの大きさが自分の器の大きさになるって、ことあるごとに言われていて。ちっちゃく悩むな、大きく悩めって。そうすると、なんか事業のこととか、いやわかんないだけど、経済のこととか、国のこととか、よそ様のためとか、人のためとか。そういうふうに思い始めたら、聞いてくれる様になったというか。

 

どっかに、自分の「ああしたいこうしたい」みたいな部分が見え隠れすると、なんかつまんないっつうか、まあもちろん僕もこうしたいとかはあるんですけれども、でもそれがあると皆しらけちゃうんだと思っていて。それもあるけど、大きいことやりたいなあとか。諦めじゃないですか?(笑) とりあえず自分のこと諦めて、大きく悩むっていうのをやらないと事業が成長しないとか、そもそもサービスとかビジネスが良くならないっていう経験をして、そういうふうになんとなく思い始めた。っていうことじゃないかなと。

 

中川(裏方):なるほどです。あと、時折すっごい感情を揺さぶるようなことをおっしゃるんですが。

 

須藤:しゃべっている言葉が何とかっていうのは、真剣に考えて真剣に仕事をしていると、なんか変わってくるんじゃないかと思うんですけれど。おしゃべりが上手いというよりも、どっちかっていうとそっちの方が大きいような気がする。

 

日本語はね、多少流暢に喋ってますけど、英語でこうしゃべれって言われたら結構キツイわけですよ。で、きついんだけど、英語でも聞いてもらえる時と聞いてもらえない時っていうのがやっぱりあって、聞いてもらえる時っていうのは、やっぱ信念とか、自信を持ってしゃべるとか。人間性の部分が大きいんじゃないかな。同じことを言ってても、通じる時と通じない時ってあるし。もちろん、もっと上手く喋れればいいなあとか思ってるんですけど、海外行っても僕の言うことを聞いてもらえるのは、それじゃないかなと思いますけどね。

 

だから、やっぱり大きく悩む、ということ。これに尽きるんじゃないかなあ。

 

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GMO-VP:すどけんさん、貴重なお時間を頂き有難うございました!