~NewsPicks、SPEEDAを展開するユーザベース社に直撃取材~
ロイター・ブルームバーグの次世代を行く企業分析データベース「SPEEDA」。 国内の主要証券会社、銀行、PEファンド、総合商社等が軒並み導入し、証券業界では「これがないと仕事にならない」との声も多い。2010年度からの人員数は18人、31人、45人、100人と、順調な組織拡大を遂げており、香港・シンガポール法人にて東南アジア展開も開始している。(2014年3月現在)
GMO VenturePartnersでは、SPEEDAを運営する株式会社ユーザベース代表取締役の梅田氏にインタビューを行い、SPEEDAの立ち上がりや、2013年9月に同社よりローンチされた経済情報ニュースアプリ「NewsPicks」の裏側について浮き彫りにすることを試みた。
株式会社ユーザベース代表取締役共同経営者 梅田優祐氏
コーポレイトディレクション、UBS証券投資銀行本部を経て、2008年、UZABASEを設立。
梅田:最初GMO-VPさんからの出資の話がでた時、あれ、なんかあんまり駆け引きしてないな、て感じがしたんですよね。だったらもうやりましょう、みたいな感じでした。あれは2009年の6月かな。
村松:春から夏のタイミングでしたね。サービスインもそのときにして。
梅田:そしてそれから、だんだんGMO-VPさんに我々が入って行っちゃったのは、どんどんお客さん紹介してくれたんですよね。いつの間にかもう、色んなアポ入れて(笑) 契約まで取ってきて頂いちゃってみたいな。株主なのに代理店みたいになってもらって。
村松:あのとき我々もVCっていう看板よりも、色んなストラテジックなことをやるチームです、みたいな自己定義をしていて。今でもなんですけど。事業一緒につくっていくみたいな発想で、Kauliとかほんとにその時ゼロからインキュベーションしたんですよ 。宮坂も事業会社出身だったし、それで代理店みたいな感じで、はりきってやってたんです。
梅田: 我々が一番最初にこまったのが、やっぱり営業だったんです。物は作ったと、なんとか作り上げたと。じゃあこれをどう売っていくかっていうので、はじめ私と新野の人脈だけの状態で。それだともう、すぐ!尽きちゃうんすよね。すぐ尽きちゃう中で、GMO-VPさんに沢山紹介して頂いたことで立ち上がりました。一番覚えているのが、大手監査法人の中でも重要な方を紹介していただいて、それでめちゃくちゃ社内に浸透させてくれたんですよね。我々だったら絶対入れなかったところを、GMO-VPさんが切り開いてくれて。我々にとって初めての、大手の契約だったんですよ。そのことで監査法人への導入実績ができて。それで次に、大手証券会社を紹介頂いて、その方面も開拓できたんです。鮮明に覚えてますねー。
村松:一時期、宮坂は投資活動よりもSPEEDAの営業活動に没頭してましたからね(笑) 大手監査法人に大規模導入だ、と言って。実際に実現させてもらって。でも、セキュリティがどうとかで、簡単に入れなかったところもありましたよね。「我々が次にどこをデューデリしてるかが外部にわかってしまう」とかで(笑)
梅田:そういうこともありましたね(笑) いまはホントにおかげさまで。一つの部署で入った後は隣の部署で入っていき、ていう感じで、我々がしっかり営業しなかったとしても、お客さんがお客さんを紹介してくれるっていう、それはもうすごく良いサイクルが完成したという感じなのですが、最初はもう大変でした。どなたの紹介で行くかで全然違うんですよ。同じ会社でも、誰に見て頂けるのか、ていうところと、どなたに紹介して頂けるのかっていうところが大きくて。すごい不思議なんですけど、ある人の紹介で行くとどの紹介でも入れないみたいなこともありまして。GMO-VPさんに紹介して頂けると、入る確率がすごく高いんです。そして会えるだけじゃなく、その会社の中でも力のある方が、ちゃんと興味を持って聞いてくれるという。
村松:一応そこは考えていたつもりで、我々紹介を依頼されることって商売柄多いんですけど、単純に頼まれ仕事で、じゃあ紹介しますっていうのは絶対したくないんですよ。紹介ディールでは「モチベーション設計」がすごい大事だと思っていて。なぜユーザベースに会う必要があって、会うとこういう良いことがあるかもしれませんよ、みたいなことをきちんとお伝えするんです。監査法人さんに紹介する時だと、直近だとこういうメリットがありますけど、ロングタームの目線でも、ぜったい上場して監査になりますよ、みたいな話とか。証券会社さんのときも、当然上場したときは、主幹事の話とかの話になっていい具合に運びますよ、とか。そうじゃないと相手先も目先の面倒さで「うち入れないから」みたいに終わる可能性も高いんですけど、そういうセットの部分もあるんだと。もちろん最終的にはコンペになるとは思うんですけど、やっぱり向こうとしても、導入を検討する真剣度が違ってくる。それで興味を持ってもらったら、良いプロダクトなので自然に導入につながるという設計を考えていました。
梅田:やっぱ一年目二年目って一番苦しいじゃないですか。あのときに手を差し伸べて頂いた方々っていうのは忘れないもんです。今のお話に登場した方々って、いまだに全員お付き合いしてるじゃないですか。
村松:最初は紹介するとこ一杯あったんですけど、だんだん紹介するところなくなってきましたよね。これ行きましたかっていっても、ああ、もう行きましたみたいな。結構急激にリーチが増えているんですよ。いくら紹介しても、そこもう行ってますみたいな。我々の出番は終わったんじゃないかみたいな。うれしいような、さびしいような(笑)
梅田:営業チームをちゃんと作ることができたというのと、あと、転職が多い業界じゃないですか。そうするとSPEEDA使ってた人が転職した先でSPEEDA導入してなかったら、仕事しづらいから入れようって、そういうサイクルが出来てきたというのも大きいです。
村松:それで、まあかなりキレーーーな形で、売り上げが、ぴたーっ!!と右肩上がりに伸びてる。そうはないんですよね。ここまで典型的なキレイなカーブというのも。なかなかこうはいかないよな、っていう風に感じています。
梅田:本当にその時その時で、必要なことを丁度よく支援してもらっています。そして今このタイミングで、NewsPicksの技術グロースハックの支援を頂いて。もうどれだけわかってくれてるんですか、って感じです。
村松:技術グロースハックは中川が主導して進めているやつですね。うまくワークすることを祈っています。
村松:次のテーマはですね。投資家に厳しい社長。すごい厳しいと思うんですよ梅田さん。
梅田:え、うそー!フフフどういうことですか。
村松:働かない株主がいると、ちょっと、正直出てってください、って言う厳しさがある。すごい厳しいんですよ!この人は代えてくださいとか、(経営会議に)出席しないでくださいとか、ストレートに言われるんですね。これは相当気合い入れないといかんなと思うわけですよ。それで何人もそうやってこう(笑) ホントに株主じゃなくなったケースもありますし。
梅田:従業員、株主さん含めて最高のチームを作る事。ここだけはやっぱ妥協しちゃいけないな、と思ったんですよね。ほんとに同じビジョンを見れるメンバーでやるのはすごい楽しいし。それと、色んなベンチャーさんとかも資金調達するときに、投資家の●●さんどうですかとか、○○さんどうですか、とか聞かれたりするわけですよ。そのとき堂々と、うちの株主最高ですよ!って言える人たちで絶対やるべきですね。いまGMO-VP、グロービス(シリーズBから、社外取締役として仮屋薗氏が参画)、マネックス、リヴァンプさんでやらせて頂いているんですが、その前に紆余曲折ありましたけど、紆余曲折のエネルギーを使って最高の株主チームを結成した甲斐はホントにあったなと。思います。はい。
村松:私も、スカイプでの参加が2回のうち一回くらいですけど。本当に真剣勝負で楽しいですあの時間は。いつ、村松さんいつもスカイプ参加なんでもういいです、と言われるかと思うとひやひやしながら。(※村松はシンガポール在住)バリュー出さなきゃ、と思って頑張ってますけど。
梅田:あ、これもあったのが、一回社内のメンバーから、経営会議に出たいです、という風に言われたことがあったんですよ。社内にスゲー出たいと思っている人がいる中で、今出てる株主メンバーがいて、それは彼にも堂々と説明できるメンバーじゃないといけないな、と思ったんですよね。それでちょっとごめんなさい、一部ワガママを言っている部分もあり。チームっていうのは従業員だけじゃなく株主含めて、やっぱ最高のチームで臨んでいくべきだと思いますね。
村松:新たに起業される方々に、数回のファイナンス(創業期・サービス開始期にシリーズAに数社のVCが参加・サービス拡張期にシリーズBとしてグロービスが参加)で今レイトステージ辺りにいらっしゃる立場から、これからの会社にアドバイスするとすれば、どんなことに注意すべきですか?
梅田:完全僕たちの場合ですけど、事業を経験されたことのあるファンドとか、ベンチャーキャピタリストの方々が絶対僕は良いなあと思っています。GMO-VPさんであれば、村松さん自らも会社経営されているじゃないですか。宮坂さんも事業経験されてて。あと熊谷さんも、ずっと大先輩として同じ道をたどっているわけなんですけど。事業経験のない方がやられているファンドだと絶対に得られないバリューを得られている思うんですよね。ずっと僕らにコミットしてくれてるじゃないですか。僕が言いたいのは、どれだけ事業をリアルに経験した方々の近くで一緒にできるかどうか。だからあまりファイナンスだけのところっていうのはオススメできません。紆余曲折あっただけに、最高のチームを結成できるっていうことがどれだけ重要かってことに気付いたわけなので。最初は心細いですし、お金だけみて人は見ないという風に決めたりするんですけど、それは後悔します、やっぱり人ですね。
あとはやっぱり何があるか分からないので、一回のファイナンスで10%のダイリュージョンがいいと思いますね。つまり一回につき10%ずつ、みたいな。20%一気にみたいなのじゃなく。一回に10%ずつだと、必ず打ち手が残るので。 だから、最初の支援の段階で30%、40%出しちゃうっていうのは、もうすごく、ほんと何が起こるか分からない世界なので、選択肢を狭めてしまうな、って思いますね。
村松:UZABASEさんは特に、不況時に創業して、リーマンショックで株価ももうどん底になって。それで、そこから株価が上がってくる中で業績も伸びていって、ファイナンスもきれいにバリュエーション上げながら、という感じを描けて非常に良かったと思うんですよね。逆に今やるとしたらもう最初にドカッと調達して、このあと市場が落ちていくと調達できなくなる、みたいなのがあるかもしれませんけどね。どうなるか蓋を開けて見ないと分かりませんが。
村松:自分もPickしたりコメントしたりしていてすごく思うんですけど、すごくその人の性格そのものが出る怖いメディアだなって気がしていて。ブログとかFBとツイッターとかもそうなのですが、それとはまたちょっと違った意味で、どのニュースをPickするのかっていうのと、それにどういうコメントをするのか、っていう2点から、他のソーシャルメディアとはちょっと違うキャラの出方がするんですよ。
梅田:そうですね、一番違うのは「テーマありき」だからですよね。まずは原発っていうものだったら原発に対する意見は?っていうので、初めてテーマが先に来るメディアだからかな、って思います。そういうものをしては初めてのものかもしれないですね。この前秘密保護法案って記事が出たときに、明確にコメントが二分したんですね、反対だ賛成だっていう(笑) それがめちゃくちゃ面白くって、これこそNewsPicksの価値だなっていう。
何か買収が起こった時とかって、デスクの周りで皆がざわついたりするんですよね、すごいよねっていう単純な感想から、これってこういう意図があるよねっていうものだったりとか。リアルなコミュニティってそういう会話っていたるところで行われてるんですね。それをインターネットで再現しただけなので。じつはニュースそのものよりも、ニュースに対してみんながどう思っているかっていうところの方が興味を持たれているんじゃないかなーって。事実だけ知りたい人の方が少ない気がするんですよね。
村松:たぶんそうなんですよ。受け身なニュース消費欲求と、能動的にニュースの深みをぐりぐり考える欲求というか、その2つがあると思うんですよね。受け身の方の欲求では、世の中で色々起きてることが漠然と心配というか気になるんですよ。それで主婦だったらワイドショーみちゃうし、ビジネスマンだったら夜帰って経済ニュースじゃないですけど、そんな感じで消費したくなる。知らないとまずい、と思ってるから。それで、なんとなく知って安心して終わり。そこにはあんまり脳みそは使ってなくて、脳の表面でパーッとみて入っておなか一杯なんですよ。その後はいいんです、忘れて。なんとなく危機感は去ったわけですから。おれは重要なこと知らないんじゃないかっていう危機感は去った。
宮坂:あーあれあったよね、っていうテーマだけあれば、満足みたいな。
村松:だけどそれとは違って、これってどういう意味だろう、次に何が起こんだ、ていう部分の問題は、実は満たされないんですよ。初めてそこにすごい価値があると思ったのはHuffington Postで、あれはニュース主体じゃなくコラム主体なんですけど「この問題に対して」っていうところに対し、ダー!とコメントが付くんです確かに。それも割と深いコメントが一時間くらいで何千と付く。それをさーっと追っていくと、あ、こういう風に捉えんのねこの問題という物事の捉え方が全部バーッとインプットされてすごく立体的に見えてくるんですよ。NewsPicksでもその立体的に物事が見えてくる感じがすごいあって、夏野さんこう考えるんだ、堀江さんこう考えるんだみたいに色んな切り口で把握できる。
村松:それで最近日経新聞を読むのが欲求不満というか、コメントねえよお!みたいに思うんですよ見てて。で自分がコメントしたいときもコメントできねえじゃん、みたいな。紙の新聞っていうのが急激にこう、、
梅田:村松さん紙の新聞読んでるんですか?
村松:いや、最近さすがにシンガポールにいったから、紙が届かなくて、それでしょうがなくデジタル日経に切り替えたんですよ。それまでは、紙じゃないと駄目だっていう論者だったんですが。
梅田:私もそうだったんですよ。
村松:それで1年半くらいデジタルでしか日経読まなくなって、
梅田:そしたら意外とデジタルで良くないすか?怖さだけだったんですよねー。
村松:ただ最近逆に紙の新聞見ると、おおー!!ってまだあんのこれ!!すごい!!とかっておもう。でコメントもつかないし転送もできないし、どうすんのこれ、とかってちょっと思ってる。
梅田:そうそう、NewsPicksは20代30代の人がメインなんですね、で、日経新聞の平均読者層は50代で。完全にそこはもう棲み分けされているような形なんですよ。新聞の世界って恐ろしくて、100年イノベーション起こってこなかったらしいんです。いま100年目の転換点だと思いますね。
100年に一回の大転換なので、そりゃあ沢山でてきますよ。とはいえ、どのニュースアプリも記事を作るっていうことには全く長けていなくて、そりゃ100年の歴史のある新聞社さんの方が圧倒的に長けているので、必ず共存するモデルを作りあげたところが生き残るっていう風に思いますね。
対談では、この他にもNewsPicksやSPEEDAの今後の展開について、さまざまな構想や哲学が語られた。これからもユーザベース社の動向を注視頂きたい。
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